11月16日11時42分配信 中日新聞
【長野県】朝日村産業振興課に本年度新設された「すぐやる係」。その名の通り、住民の要望などに素早く対応し、村民への行政サービス向上につなげようとの狙いだ。仕事を開始して半年。どんな様子なのか、のぞいてみた。
畑が一面に広がる朝日村古見(こみ)地区。2トントラックやショベルカーを駆使して動き回る男性職員がいた。村産業振興課すぐやる係の清水文行さん(58)だ。見栄えが悪くなった村道わきの植栽帯のツツジなどを取り除く作業に、塩尻地区シルバー人材センターの会員とともに汗を流していた。
近づいて話を聞いてみると「これがすぐやる係の仕事だよ」と笑った。
すぐやる係は、昨年4月に初当選した中村武雄村長の肝いりで設置されたユニーク部署。中村村長は「村民の要望に素早く対応できる部署が必要と感じたから」と設置目的を説明する。
村職員が率先して村民に近づき、動くことで村民の協力も得られるようになる。こんな「協働の村づくり」を描く。
係の担当職員は清水さんだけだが、1人で手に負えない仕事は、産業振興課や他の課の職員が応援に駆けつけるバックアップ態勢もとっている。
これまでに処理した仕事は約50件。村道側溝にたまった泥を掘り出したり、投棄された家電品を撤去したり。村の公園でアシナガバチの巣を駆除したこともあった。
清水さんのモットーは「村民から苦情が来る前に対応する」。仕事の“注文”を受けて動くのではなく「自分で見つける」のが係の特徴で、こなした仕事の半数は、清水さんや職員が気付いて対応した。「村民に言われる前に処理できれば一番いい」と話す。
一方で、村民に行政に依存する意識が強まらないのだろうか-。こんな心配には「『なんでもやる』係ではありませんから」と清水さん。自宅の庭の草取りなどの個人的な依頼には出動せず、代わりにシルバー人材センターなどを紹介しているという。
「これからは除雪作業や凍結防止剤の散布などが忙しくなりそう」と語る清水さんは、「すぐやる係の仕事を通して、村民目線で考えることの重要性を感じています」。
村職員と村民が手を携えてより良い村にする。そんな姿ができあがるのか、これからも仕事ぶりを見守りたい。
(一ノ瀬千広)