各務原市川島笠田町の県世界淡水魚園水族館「アクア・トトぎふ」が先月末、岐阜市産のカスミサンショウウオの産卵に成功した。岐阜市指定の貴重種で同館では2007年3月から保護の一環で飼育し、繁殖は初めて。
主に西日本に生息するカスミサンショウウオは体長7~13センチで、県内の生息域は岐阜市、揖斐川町の2カ所のみとされる。環境省は絶滅危惧(きぐ)2類、県は1類に指定。岐阜市は条例で無許可の捕獲を禁じている。
ふだんは山の落ち葉や腐葉土の下に隠れ、春先の繁殖期に止水で産卵するが、岐阜市内の繁殖地は駐車場を囲むコンクリート製のU字形の側溝内。不安定な環境で渇水や共食いなども懸念され、同館と岐阜高校自然科学部が保護目的に卵や幼生の飼育、放流を続けている。
産卵したのは最初に保護した卵のうから育った個体。先月29日、黒っぽい卵が約40個入った直径5センチほどの卵のう1対を生んだ。通常の産卵期より3カ月早いが、水温や気温の変化を自然界に近づけたことが功を奏したという。
同館4階で展示しており、1カ月ほどで幼生になり、3年で成体になる見込み。飼育担当の田上正隆さん(31)は「いつ絶滅してもおかしくなく、地域特有の遺伝子を守るための『再生産』につながる。今後も域外保全の形で種を守りたい」と話している。
(久下悠一郎)