JR久大線の豊後中村駅(九重町)近くの奥双石(おくなめし)踏切で6月、乗用車のタイヤが線路脇の側溝にはまり、線路上で立ち往生、駅員や地域住民らの連携で列車と衝突する事故を回避できていたことが、1日までに分かった。同駅は無人化の危機にあり、「これからも有人駅であり続けてほしい」との声が高まっている。
昨年9月、JR九州が同駅を無人化する方針を発表。九重町内では唯一の特急停車駅で、町の玄関口でもあることから住民が無人化に反対。今年4月から来年3月まで、JRから町が業務委託を受け、町内の「九重観光サービス」が駅業務を請け負っている。
関係者によると、事故は6月10日午後5時ごろ発生。立ち往生している車を見つけた通行人の女性が駅に駆け込み、同社の従業員で駅員の穴井邦男さん(64)に状況を伝えた。業務で駅に来ていた同社の竹尾友彦会長が野上郵便局に助けを求め、局員7人とともに車を押したが動かない。たまたま通り掛かった町内の土木工事業「園田組」のダンプカーと車をワイヤでつなぎ、引っ張り上げた。
列車の通過時間は同5時7分。穴井さんが司令に通報し、列車を止めたため、惨事は免れた。竹尾会長は「無人化していれば、通報が間に合わなかったかもしれない」と振り返る。
同駅は地域の交流の拠点となる豊後中村活性化センターに併設され、6月30日に落成式が行われた。地元の野上まちづくり協議会の藤沢昌由会長は「センターが併設された駅はこれから地域の核となる。来年からも有人駅であるように、協議会が駅業務を請け負えないか町と協議を重ねている」と話した。