ゲリラ豪雨「いきなり激流」那覇のガーブ川

8月20日0時58分配信 読売新聞

 いきなり腰の高さに達した激流が5人を襲った――。那覇市中心部のガーブ川で19日、作業員5人が地下水路へと流された事故。吸水性のないアスファルトに降り注いだ「ゲリラ豪雨」は、コンクリートで覆われた水路に集中的に流れ込んだ。専門家は「都市部では、どこででも起こりうる災害」と警告する。

 ◆救助の大城さん、途中で胴長靴脱ぐ◆

 「一気に持って行かれた」。地下水路の中を流され、無事救助された大城哲志さん(36)は事故当時をこう振り返った。

 地下水路は約1キロあり、大城さんは出口まで約200メートルの浅瀬に立っているところを救助された。大城さんは、流される途中で胴長靴を脱いだという。胴長靴を着けたままでは中に水が入って動きが取りにくくなる。流された全員が胴長靴を着けていた。

 水路の強度調査を発注した地元の再開発組合の関係者によると、5人はこの日、地下水路の入り口付近に土のうを積んで流れを止め、地下水路の底を削り、中の鉄筋の本数や状態を調べていた。

 ガーブ川は海の干満の影響を受けやすいため、調査は水深が最も低くなる大潮の干潮時に合わせて日程が組まれた。通常ガーブ川の水深は60センチほどだが、この日の事故直前は水深30センチまで下がっていた。

 ところが、上流から押し寄せた濁流で、水かさは一気に腰の高さの約1メートルぐらいまで上がった。那覇署によると、1人は工事用の機材を上げ下げするロープにつかまり、もう1人はその作業員にしがみついていたが、やがて流れにのまれたという。

 「こんな街中を鉄砲水が襲うなんて」。行方不明になった中村正吉さん(42)の父正光さん(68)は同日夕、約40キロ離れた沖縄県恩納村から現場に駆けつけ、言葉を詰まらせた。

 ◆過去にも事故、作業前に注意◆

 現場では過去にも小学生が流される事故が起きている。行方不明4人のうち3人が勤める丸高建設工業の幹部は作業開始前、作業員にこのことを話し、「危険な場所なので気をつけてくれ」と声をかけたという。

 那覇市下水道課によると、ガーブ川は米国統治下の1963年、市が大雨対策として整備した。長さは久茂地川に合流するまでの約4キロで川幅は5~6メートル。多くの観光客が訪れる「国際通り」の下も流れている。

 市消防本部によると、ガーブ川は市内の道路や歩道の側溝に流れ込む雨水が集まる構造になっている。すべてコンクリートで雨を吸収する土手はない。湾曲が少なく川幅も狭いため短時間の豪雨でも急流が発生しやすいという。

 防災システム研究所(東京)の山村武彦所長は、ゲリラ豪雨が増加傾向にある気象状況を指摘したうえで、「コンクリート舗装された都市部では雨水がしみ込まずに河川に集まり、20~30分で水位が一気に上がる。危険を伴う工事現場では見張りを立て、迅速に避難できるようにする必要がある」と指摘している。

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