ワニの目撃情報が寄せられた豊橋市石巻町の貯水池「三ツ口池」。警察官が警戒に立ち、やじ馬も詰めかける「騒動」となっている。28日には、池を管理する水資源機構の職員がボートで初めて探索したが、見つからなかった。(岡田匠)
豊橋駅から車で約20分。石巻山(標高358メートル)のふもとにある三ツ口池は面積7・2ヘクタール。水道、農業用水の貯水池で、一番近い民家まで1キロほど離れている。立ち入り禁止とされているが、ブラックバスなどを目的に入り込む釣り人は珍しくない。
この日は水資源機構の職員3人がボートに乗って池に入った。目撃情報があった東側の茂みを中心に双眼鏡を使って、約30分間捜した。29日以降も続けるという。同機構豊川用水総合事業部の大塚義隆次長は「池には近寄らないでほしい」と呼びかけている。
最初の目撃情報が豊橋署に寄せられたのは25日。住民らで組織する石巻校区防犯パトロール隊の鈴木節二さん(72)が届け出た。釣り人から「水面から目の玉を二つ出したワニが近寄ってきた」と聞いた。24日には鈴木さん自身が、1メートルぐらいの黒くて、棒のような物体が泳いでいるのを見たという。
豊橋署では、25日から署員を日中、池に配置して警戒に当たっている。「ワニ?注意」と書いた紙も張った。
26、27日の週末はやじ馬がひっきりなしに訪れた。28日に訪れた男性(55)は「ワニがどんな風に泳ぐのか見てみたい」と話した。「最近、カワウやカモといった水鳥を見かけなくなった。ワニのせい」と話す人もいた。
ワニが屋外で捕獲される事例は珍しくない。08年8月には福岡県筑後市の田んぼのあぜ道で、07年9月に金沢市の住宅地の側溝などであった。豊橋市保健所によると、ワニの飼育には保健所への登録が必要だが、市内での登録件数はゼロという。ただ市内のペットショップの店長によると、インターネットなどを通じて無許可で購入する人も珍しくないという。体長10~20センチの子どもで10万円前後。種類によって数年で2~3メートルに育つという。
約200頭のワニを飼育している静岡県東伊豆町の「熱川バナナワニ園」の飼育員によると、ワニはトンボや魚、鳥など何でも食べるが、気温が14度以下になると凍死する。「半年ぐらいはエサを食べなくても生きていけるが、池に生息していたとしても、冬を越すのは難しいだろう」と話している。