南米チリで起きた巨大地震に伴う津波で、宮城県気仙沼市で海につながる排水溝を海水が逆流し、マンホールや側溝からあふれて道路などに浸水被害をもたらしたことが1日、東北大の今村文彦教授(津波工学)らの現地調査でわかった。
マンホールなどからあふれる津波被害が確認されたのは初めて。
今村教授らは、2月28日の津波で冠水被害のあった気仙沼市の4か所で住民らから被害の様子を聞き取り調査。その結果、海岸線から約400メートル離れた住宅街で28日午後4時過ぎ、海岸線から水が押し寄せる約15分前に、側溝から水が約20センチの高さで噴き出したことがわかった。海岸線から30メートル離れた魚市場前でも、マンホールから水が約50センチほどあふれ出した。その後、岸壁から水も押し寄せ、50センチ前後の冠水があったという。このほかの2か所でも同様の被害が確認された。
今村教授によると、排水溝を逆流する海水は、海岸線や港湾の岸壁などを乗り越えて陸地を襲う海水よりも浸水が速く、波が防潮堤を乗り越えなくても浸水被害をもたらすことになり、逃げ場を失うことになりかねない。予想される津波の高さだけで、安全性を判断するのは危険だという。今村教授は「東海地震や東南海地震で大きな津波が発生した場合、下水道が整備された首都圏や関西地方でも同様の被害が出る可能性がある。地面の下を通る海水も意識し、ハザードマップ(災害予測地図)に反映させるなど、防災計画を見直すべきだ」と訴えている。
(2010年3月2日00時06分 読売新聞)