生活立て直し手探り 街に砂・泥、住民困惑 宮城沿岸

チリ大地震による津波が太平洋沿岸に押し寄せてから一夜明けた1日、宮城県内の沿岸市町では漁業者が養殖施設などの被害確認を急ぎ、冠水した道路に散乱したごみの片付けに追われる住民の姿も目立った。津波到来で19万人に避難指示・勧告が出され、気仙沼市、南三陸町などの一部では避難所で不安な夜を過ごした住民もいたが、1日朝までにほとんどが帰宅した。

<石巻市>   
 カキを中心に養殖施設に被害が確認された市内の各浜では1日早朝から、漁業者が被害の確認作業に追われた。

 牡鹿半島にある石巻市狐崎浜の県漁協石巻市東部支所では1日午前6時から、組合員総出で全漁船74隻を海に出し、被害調査を実施した。

 いくつものカキの養殖いかだが絡まり合ったり、流されたりして「すぐには手を出せない状態」と支部幹部。阿部和芳支所長は「潮の満ち引きが強く、海中で渦を巻いたのではないか」と推測。被害の拡大に困惑の色を隠せなかった。

 東松島市でも「浅瀬にあったノリ養殖施設30基が大破した」(県漁協宮戸西部支所)「小型漁船1隻が流され水没」(県漁協矢本支所)などが確認され、漁業者の不安が広がった。

<気仙沼市>  
 1240人が学校などに避難したが、28日夜のうちにほとんどが帰宅。海沿いに住むお年寄りや福祉施設の入所者ら53人が学校体育館などで朝を迎えた。津波警報の解除を受け、1日午前9時ごろまでに全員が自宅や施設に戻った。

 道路が冠水した気仙沼湾や大島・浦の浜漁港では商店や住宅に流れ込んだ海水をかき出したり、ぬれた段ボールを捨てたりする作業に追われた。

 同市魚町の酒造店の村上善之さん(54)は「警報が出てすぐに机や書類などを2階に運んだので被害は最小限に抑えられた。ただ、約20センチの高さまで泥水が入り、床や壁の汚れを落とすのは大変だ」と話した。

 前日に28便が運休した気仙沼と離島・大島を結ぶ大島汽船は1日の始発から通常通り運航した。

<塩釜市>   
 塩釜港では津波で養殖施設が航路に流出したため午後3時半まで航行禁止となり、松島観光や離島航路に影響が続いた。

 マリンゲート塩釜は、遊覧船の運休で訪れる客も少なく閑散としていた。遊覧船の社員は「航路の安全が確認できるまでは何もできない」と船の点検をしていた。

 松島ベイクルーズ(塩釜市)は全12便が運休。団体客ら約100人の予約を断った。2日に航路の安全を確認した上で、午前10時から運航再開する。マリンゲート塩釜と浦戸諸島を結ぶ市営汽船は、浦戸発の1便だけを運航。2日は、早朝と夕方の便以外を運航する。

 野々島の浦戸二小、浦戸中は市営汽船の運休で臨時休校したが、2日から授業を再開。市教委の担当者は「1日だけの休校で済んだ」とほっとした表情だった。

<女川町>   
 町の中心街が冠水したため、住民や町職員が店、道路の清掃に追われた。
 浸水した道路や店舗には、津波が運んだ砂や側溝からあふれた泥が広がった。商店主らは、早朝からブラシで砂を掃き出す作業に精を出した。海水を吸った土のうを店の前に出して乾燥させたり、被害を避けて店頭から外した商品を陳列し直したりする姿もあった。

 電気店の男性店主(45)は「けさは2時間ほど早く来て店を片付けた。床から商品を離して、被害を防げたのが何より」と胸をなで下ろした。

 浸水で電気回線がショート、自販機が壊れ、店も停電したという薬局の女性(74)は「50年前にチリ沖地震の津波を経験していたので怖かった。この程度の被害で済んでよかったと思いたい」と話した。

<南三陸町>  
 住宅4棟が床上、床下浸水したほか、養殖施設が打撃を受けた。
 津波が岸壁を約20センチ越えた同町志津川の袖浜漁港では、カキ養殖業者が流された重りを修理するための準備に追われた。重りを漁船に積み込んでいた50代男性は「70キロの重りを100個ほど付けているがほとんど流された。カキそのものに被害が無かったのがなにより」と話した。

 カキむき施設は事前に機械類を避難させていたこともあり、被害はなく消毒をして数日中に使えるようになるという。

 ワカメの見回りをして新漁港に戻ってきた養殖業の三浦吉助さん(72)は「ワカメの養殖ロープが集まって絡み合っている。収穫間際で早く直せば被害は少ないが、海が落ち着くまでは手のつけようがない」と肩を落とした。

<仙台市>   
 市消防局によると、1メートル10センチの津波が観測された仙台港周辺を含めて冠水などの目立った被害はなかった。津波注意報が解除された1日午前10時15分に警戒配備も解散した。

 市内沿岸部の小中学校などに避難した住民は28日午後9時までに全員が帰宅した。

 市は1日、青葉区のおおまち商店街とサンモール一番町商店街で買い物客や観光客を対象とした避難誘導訓練を予定していたが、中止とした。

 市消防局防災安全課の村上明伸課長は「気象庁の当初の予報通り3メートルの津波が来たら、被害なしでは済まなかっただろう。現場から持ち上がる課題を精査して、迅速な初動対応につなげたい」と話した。

<塩釜・浦戸138世帯一時断水>
 塩釜市・浦戸諸島の野々島、寒風沢島、朴島で2月28日午後6時半ごろ、3島の全戸138世帯が断水した。津波の影響で海中送水管が破損したためとみられ、別系統の送水管に切り替えて、1日午後4時すぎに復旧した。

 浦戸諸島の水道は、塩釜市の浄水場から海中送水管で桂島を経由して3島に送られている。

 市は桂島と野々島の間を結ぶ海中送水管が、津波の影響で破損した可能性が高いとみている。備蓄しているペットボトルの水を各戸に配布した。

2010年03月02日火曜日

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